DTMを始めると、すぐ「プラグイン沼」の話が耳に入ります。セール、名機、ランキング——情報が多すぎて、何から入れればいいか分からなくなる。でも本当のところ、最初に必要なプラグインは、たった数種類の「役割」だけです。この記事では、初心者がまず入れるべき6つを、それぞれ「何のための道具か」という考え方つきで紹介します。数ではなく役割で選べば、もう迷いません。
先に、いちばん大事な考え方を置きます。プラグインをたくさん持っても、音は良くなりません。良い音は、少ない道具を正しく使えるかで決まります。EQを10個持っている人より、EQを1個きちんと使える人のほうが、ずっと良い曲を作ります。
だから覚えるのは、製品名ではなく「役割」です。役割さえ分かれば、最初はDAWに標準で入っているもので全部まかなえます。以下の6つの役割を、順に見ていきましょう。まだDAWを決めていない人は、先にDTMの始め方で全体像を押さえておくと、この話がスッと入ります。
役割:音の周波数バランスを整える。まず覚えるべき最重要の道具。
EQは、音の中の「高い成分・中くらい・低い成分」を、それぞれ足したり削ったりする道具です。歌なら、こもった低音を削るだけで一気にすっきりします。使い方の入口は、増やすより「要らない部分を削る」こと。声の下のほうにあるモワッとした帯域を削る、耳に痛い高音を少し抑える——これだけで音が整います。
「EQは、まず削る道具だと思ってください」。教えるとき最初にこう伝えます。足すのは上級者になってから。削るだけで、初心者の音は見違えます。
効果が耳で分かりやすいので、最初に覚えるならEQからがおすすめです。DAW標準のEQで十分。まずは1本のボーカルトラックで、低い帯域を削る練習から始めてみてください。
役割:音量のばらつきをそろえて、聴きやすく前に出す。
歌は、サビで大きく、Aメロで小さく、と音量が波打ちます。そのままだと「大きいところはうるさく、小さいところは埋もれる」。コンプレッサー(略してコンプ)は、大きい音を少し抑えて、全体の音量差をならす道具です。結果として、声が安定してオケの中に馴染みます。
EQに比べて効果が地味なぶん、慣れが要ります。最初は「かかりすぎ」を避け、ほんの少しだけ効かせるのがコツ。DAW標準のコンプに、ボーカル用のプリセットがあれば、そこから始めると分かりやすいです。EQで音を整理してから、コンプで安定させる——この順番が学びやすいです。
役割:音に空間の広がり・奥行きを足す。
録ったばかりの歌は、ぺたっと近くて乾いた音です。リバーブは、そこに「部屋の残響」を足して、自然な広がりを作ります。ホールで歌っているような響き、小さな部屋のような近さ、と種類を選べます。
初心者がやりがちなのはかけすぎ。お風呂のようにボワボワになって、かえって曲がぼやけます。最初は「うっすら」を意識して、無しの状態と聴き比べながら足すのが正解です。ちなみに、録音時の部屋の響き自体を減らしたいときは、プラグインより先に環境を整えるのが効きます。詳しくは自宅の防音・吸音を安く整える方法をどうぞ。
役割:歌の「サ行」「シ」の耳障りな音を抑える。
歌ものを録ると、「さしすせそ」の音だけが鋭く飛び出して、耳に刺さることがあります。この「歯擦音(しさつおん)」を、その帯域だけ狙って抑えてくれるのがディエッサーです。地味ですが、ボーカル曲には効果てきめん。
歌ってみたや弾き語りを録る人には、早めにそろえてほしい1本です。録音の入口を整える歌ってみたの録音環境の作り方とセットで覚えると、仕上がりが安定します。
役割:音をこだまのように繰り返し、奥行きや広がりを演出する。
ディレイは、声を少し遅らせて繰り返す「やまびこ」の道具です。サビの語尾にうっすらかけると、曲に立体感が出ます。リバーブが「面」の広がりなら、ディレイは「点」の反射。使い分けると表現の幅が広がります。
これは必須というより「表現を足す」段階の道具です。最初の1曲では無くても困りませんが、EQ・コンプ・リバーブに慣れたら、次に試すと楽しい1本。曲の世界観づくりにも効きます。作曲そのものを深めたい人は作曲のやり方もあわせて。
役割:曲全体の音量を持ち上げ、配信で埋もれない大きさにする。
曲を書き出す最後の段階で、全体の音量を上げて「配信サービスで聴いたときに小さすぎない」状態にします。この最終処理を担うのがリミッター(マキシマイザー)です。曲全体をまとめるトラック(マスター)に、最後に1つだけ挿します。
ただし上げすぎると音が潰れて歪みます。目安の基準があるので、配信を前提にするなら配信のラウドネス基準とマスタリングの目安を確認してから調整するのがおすすめです。ここは「入れすぎない」が鉄則の場所です。
りくさんは無料プラグインを30個以上ダウンロードして、どれを使えばいいか分からず、1トラックに5個も挿しては音がぐちゃぐちゃになっていました。思いきってEQ・コンプ・リバーブ・ディエッサーの4つだけに絞り、他は全部外したところ、「何をしているか自分で分かる」ようになり、1曲を仕上げる時間が半分に。「増やすより減らすほうが上手くなるって本当だった」と話してくれました。
「結局いくらかかるの?」への答え。最初は0円で十分です。多くのDAWには、上の6役割のうち少なくとも4つ(EQ・コンプ・リバーブ・ディレイ)が標準で入っています。まずはこれで1曲通しましょう。
| 段階 | そろえるもの | 費用 |
|---|---|---|
| 最初 | DAW標準のEQ・コンプ・リバーブ | 0円 |
| 歌もの強化 | 無料または有料のディエッサー | 0〜数千円 |
| 仕上げ | リミッター(標準でも可) | 0円〜 |
| 質感が欲しくなったら | 気に入った役割だけ有料版へ | 役割ごと |
買い足すのは、「今持っている道具で足りない役割が、はっきり分かったとき」だけ。セールに釣られて役割の重複した製品を増やしても、上達にはつながりません。無料でどこまでできるかは無料で始めるDTMにもまとめました。まずは手持ちで1曲、が何より近道です。
A. まずはEQ・コンプレッサー・リバーブ・ディエッサーの4つがあれば、歌もの1曲を仕上げられます。これらはDAWに標準で付いていることが多く、追加購入せずに使えます。足りなさを感じてから、必要な役割のプラグインだけを買い足すのが失敗しない順番です。
A. 最初は無料やDAW標準で十分です。多くのDAWには実用レベルのEQやコンプが最初から入っており、それだけで曲を完成できます。有料版は音の質感や操作性が優れますが、使い方が分からないうちに買うと持て余します。標準で不足を感じた役割だけ有料を検討しましょう。
A. 数をそろえても音は良くなりません。良い音は、少ない道具を正しく使えるかで決まります。同じ役割のプラグインを何個も持つより、EQとコンプを1つずつ深く使いこなすほうが上達します。買い足すのは、今持っている道具で足りない役割が明確になったときだけで十分です。
A. EQから覚えるのがおすすめです。EQは不要な低音やこもりを削るだけで音がすっきりし、効果が耳で分かりやすいためです。コンプレッサーは音量のばらつきを整える道具で、効果が地味なぶん慣れが要ります。まずEQで音を整理し、次にコンプで安定させる順番が学びやすいです。
STAR ROUTE MUSIC AGENCY
スタールートは、DTMの道具選びから、実際に1曲を仕上げてSNSで届けるところまで、全国どこからでもオンラインで伴走する音楽事務所です。ミックスでつまずいたところ、音の作り方の相談も歓迎します。楽曲制作のサポートも、発信の学びも用意しています。まずは今の曲を聴かせてください。相談は何度でも無料です。