「もう、やめようかな」。ギターケースを見るのも、少ししんどい。前は楽しかったはずなのに、いつからか、投稿するのも、練習するのも、義務みたいになっていた。——この記事は、そんな気持ちの人に向けています。やめることを止めはしません。でも、決める前に、5つだけ確かめてほしいことがあります。あなたが本当にやめたいのか、それとも、ただ疲れているだけなのか。それを見分けるための、静かな時間にしてください。
長く音楽をやっている人ほど、「やめたい」と思った夜を、何度も通り過ぎています。そしてその多くは、本当に音楽が嫌いになったわけではありませんでした。音楽を嫌いになったのではなく、音楽まわりの「しんどいこと」に疲れただけだった、というケースがとても多いのです。
SNSの反応に一喜一憂して疲れた。伸びない数字に心が削れた。まわりと比べて落ち込んだ。お金の不安に押しつぶされそうになった。——これらは全部、音楽そのものではなく、音楽の「まわり」にあるものです。
音楽が嫌いになったのか。それとも、音楽で戦うことに疲れただけなのか。この2つは、まったくちがう。
だから、決める前に切り分けます。5つの確認を通して、あなたの「やめたい」の正体を、静かに見ていきましょう。まずは、ひとりの人の夜の話から。
結衣さん(仮名・24歳)は、弾き語りの活動を1年半、続けてきました。フォロワーは520人。でも、ここ数ヶ月、伸びが止まっていました。上げても上げても、再生数は横ばい。同期に始めた人が先に売れていくのを見て、心がすり減っていきました。
ある夜、結衣さんは、ギターをケースにしまいました。「もう、いいかな」。撮影用の三脚をたたみ、机の上の歌詞ノートを引き出しの奥に入れて、アプリのアイコンをホーム画面から消しました。
「がんばってるのに報われないなら、もうやめたほうが、楽になれる気がした」
ケースを閉じたとき、少しだけ、ほっとしたそうです。でも同時に、胸の奥に、説明のつかない痛みも残った。——この痛みの正体を、結衣さんはあとで知ることになります。ここからの5つの確認は、結衣さんが実際に通った道でもあります。
まず、いちばん大事な確認です。あなたは今、ちゃんと休めていますか。睡眠、食事、心の余白。これらが削れているとき、人はどんな好きなことでも「やめたい」と思います。それは音楽の問題ではなく、単純に、心のバッテリーが切れているサインです。
おすすめは、「やめる」を「2週間休む」に置き換えることです。完全にやめる決断は、疲れているときにしない。これは鉄則です。2週間、投稿もせず、練習もせず、ただ休む。そのあとで、もう一度、自分の気持ちを見てみてください。
疲れの正体がスランプなら、音楽のスランプの抜け方も助けになります。休むことは、逃げではなく、続けるための技術です。
次の確認です。ためしに、こう想像してみてください。「誰にも見せなくていいから、好きな曲を一曲だけ、歌ってみて」と言われたら、どう感じますか。
もし、少しでも「歌ってみたいかも」と思えたなら、あなたは音楽が嫌いになったわけではありません。嫌いになったのは、たぶん「評価される場所」のほうです。SNSの数字、比較、反応の少なさ。そういう「戦い」の部分に疲れているだけかもしれません。
その場合、やめるべきは音楽ではなく、今のやり方です。SNSと距離を置いて、まず自分のために歌う時間を取り戻す。数字を見るのを月イチにする。SNSに疲れた人はSNSが続かないアーティストへや他人と比べてしまう問題を読むと、少し肩の力が抜けるはずです。
「やめたい」と思う人の多くが、無意識に、フォロワー数や再生数で、自分の価値を測っています。数字が伸びない=自分に価値がない、と感じてしまう。でも、この二つは、まったく別のものです。
考えてみてください。あなたの音楽で、一度でも、誰かがふっと救われた瞬間があったとしたら。その事実は、フォロワーが100人でも1万人でも、変わりません。数字は「どれだけ届いたか」の目安ではありますが、あなたの音楽の価値そのものではないのです。
| 数字が測れるもの | 数字が測れないもの |
|---|---|
| 今、どれだけの人に届いたか | あなたの音楽が持つ意味 |
| 発信の仕組みが育ったか | 誰かの一日を支えた瞬間 |
| 今月の成長のペース | あなたが音楽を続ける理由 |
ためしに、こう自問してみてください。「もし、フォロワー数が一生表示されなくなったら、それでも歌いたいか」。答えが少しでも「歌いたい」なら、あなたが本当に好きなのは、数字ではなく音楽そのものです。数字は、活動を続けるうちに、あとからついてきます。順番を逆にしないでください。数字に心をすり減らしているなら、比較のループから抜ける比べて苦しいループから抜け出す方法もあわせてどうぞ。
4つめ。今、あなたは、どれだけのことを一人で抱えていますか。作る、録る、撮る、編集する、投稿する、分析する、そしてお金の心配もする。これを全部一人でやれば、誰だって燃え尽きます。「やめたい」は、あなたが弱いからではなく、単純に、抱えている量が多すぎるからかもしれません。
伴走者を持つという考え方は、音楽活動に伴走者は必要?に書いています。「一人でやる」を、いったん手放していい。
最後の確認です。目を閉じて、想像してみてください。音楽を完全にやめて、半年が過ぎた、ある日の夜。あなたはどんな顔をしていますか。
すっきりして、笑っていますか。それなら、やめることは正しい選択かもしれません。——でも、もし、その想像の中で、ふと寂しそうな顔をしていたら。誰かの弾き語りをSNSで見て、胸がぎゅっとなっていたら。それは、心の奥では、まだ手放したくないという声です。
もう一つ、試してほしいことがあります。今すぐやめると宣言するのではなく、「あと3ヶ月だけ、やり方を変えて続けてみる」と、期限つきで決めてみる。人は、終わりが見えていると、意外と続けられます。3ヶ月やってみて、それでも気持ちが晴れなければ、そのとき手放せばいい。多くの人が、この3ヶ月のあいだに、また音楽を好きになる瞬間を取り戻します。
結衣さんは、この想像をしたとき、泣いてしまったそうです。やめた自分が、あまりに寂しそうだったから。ギターをしまった翌週、彼女はもう一度ケースを開けました。ただし、前とはやり方を変えて。数字を見るのを月イチにして、SNSは運用代行に一部を任せ、「自分のために歌う時間」を、週に一度だけ、必ず作るようにしました。
「やめたいんじゃなくて、あのやり方に疲れてただけだった。それに気づけて、よかった」
半年後、結衣さんのフォロワーは520人から1,050人になりました。数字も動きました。でも、それ以上に変わったのは、音楽をまた、好きだと思えるようになったことでした。
ここまで5つを確かめて、それでも「やっぱり、やめたい」と思うなら——それも、まったく正しい選択です。音楽をやめることは、負けでも、逃げでもありません。あなたの人生は、音楽のためだけにあるのではないから。
そして、覚えておいてください。一度離れても、また戻ってくることはできます。音楽は逃げません。何年後でも、戻りたくなったら戻れます。そのときのことは、一度離れた音楽に、もう一度戻る勇気に書いてあります。
やめるにしても、続けるにしても。今夜のあなたの気持ちは、真剣に音楽と向き合ってきた人にしか、たどり着けない場所です。その気持ちごと、大切にしてあげてください。つらくてどうしようもない夜は、泣きたい夜のための処方箋も、そばに。
STAR ROUTE MUSIC AGENCY
スタールートは、全国どこからでもオンラインで伴走する音楽事務所です。「やめたい」の正体が、疲れなのか、やり方なのか。一人では見えにくいものを、一緒にほどきます。SNSを丸ごと任せる、作ることに集中する、少し休む——選択肢はいくつもあります。相談は何度でも無料。まずは、今の気持ちをそのまま聞かせてください。