夜、布団の中でスマホを見て、他の誰かの数字に胸がざわつく。「いいな」より先に「なんで自分は」が来てしまう。あなたがだめだからではありません。比べてしまうのは、まだ本気だからです。この記事は、その苦しいループを責めずに、少しずつほどいていくための手紙のような話です。
麻衣さん(仮名・24歳)は、弾き語りの動画をSNSに上げはじめて半年になります。最初は「聴いてくれる人がいる」だけで泣きそうなくらいうれしかった。でも、いつからか、投稿するたびに他の人のアカウントを開くようになっていました。
同じ時期に始めたはずの人が、フォロワー8,000人。自分は420人。似た曲を歌っている人の動画に、12万回の再生数。自分の動画は、いちばん伸びたもので900回。指はスクロールを止められず、気づけば深夜2時。歌うために始めたはずなのに、最近はギターより先にスマホを手に取っている——。
「わたし、なにやってるんだろう。あの子は才能があって、わたしにはない。ただそれだけの話なんじゃないか」
その夜、麻衣さんはそう思いました。もしあなたが今、同じような場所にいるなら、まず伝えたいことがあります。それは、その苦しさはあなたの弱さではない、ということです。
比較がこんなにも苦しい理由は、SNSという場所の作りにあります。タイムラインに流れてくるのは、その人の365日ではありません。伸びた投稿、うまくいった瞬間、いい表情の一枚——つまり、その人のハイライトだけが集められて、あなたの目の前を通り過ぎていきます。
あなたはそれを、自分の「舞台裏」と比べています。うまく歌えなかったテイク、消した投稿、伸びなくてへこんだ日。編集済みの完成版と、まだ荒いメイキングを並べて、「負けた」と感じている。これはフェアな勝負ではありません。ルールがそもそも歪んでいるのです。
さらに、いま多くのSNSは「おすすめ」で伸びている投稿ばかりを見せてきます。あなたの目に映る他人が、実際よりずっとキラキラして見えるように、仕組み自体がなっている。この構造を知っておくだけで、「見えているものが全部ではない」と少し息がしやすくなります。仕組みの話は他人と比べてしまう問題|SNS時代のメンタルの守り方でも掘り下げています。
「比べないようにしよう」と何度思っても、また比べてしまう。それで自分を責めて、二重に苦しくなる。この悪循環に、たくさんの人が落ちています。
でも、比較そのものは悪ではありません。人は、大切に思っているものほど比べます。趣味で月に一度だけカラオケに行く人は、プロの歌唱を聴いても「すごいな」で終わります。あなたが苦しいのは、そこに自分の人生を懸けているからです。羨ましいという感情の奥には、たいてい「わたしもそこへ行きたい」という願いが隠れています。
「才能がない」と感じてしまう夜には、「自分には才能がない」と落ち込むあなたへも、そっと隣に置いておいてください。
フォロワー8,000人の人が、幸せとは限りません。数字が伸びた人には、伸びたなりの不安があります。「次も伸ばさなきゃ」「落ちたらどうしよう」。多くのフォロワーを持つ人ほど、比較のループのもっと深いところで戦っていることもあります。
そして、数字はその人の音楽の価値そのものではありません。再生数は「どれだけ見つけてもらえたか」を表すだけで、「どれだけ心に残ったか」は測れません。あなたの900回の再生の中に、歌詞をノートに書き写してくれた誰かがいるかもしれない。落ち込んだ夜にあなたの声で救われた人が、静かに一人いるかもしれない。それは数字には出ません。
| SNSの数字が示すもの | 数字が示さないもの |
|---|---|
| どれだけ多くの人に表示されたか | どれだけ深く心に届いたか |
| アルゴリズムに乗れたかどうか | あなたの音楽の本当の価値 |
| その瞬間の勢い | 数年後まで残る一曲かどうか |
| フォローという軽い一押し | 誰かの人生を支えた瞬間 |
数字を追うこと自体が悪いのではありません。ただ、それを「自分の価値の点数」だと勘違いした瞬間に、苦しみが始まります。
比べることをゼロにするのは難しい。だったら、比べる相手を入れ替えてしまいましょう。他人ではなく、過去の自分と。
半年前のあなたは、カメラの前で声が震えていませんでしたか。今はどうでしょう。歌い出しが、少し落ち着いた。ギターの左手が、前より速く動く。撮り直しの回数が、10回から3回に減った。他人と並べると見えないこの変化は、過去の自分と並べたときにだけ、はっきり浮かびます。
成長を実感する感覚がつかめてきたら、音楽活動の目標の立て方で、他人ではなく自分のペースの計画に落とし込んでいくのもおすすめです。
頭ではわかっていても、夜になるとまた比べてしまう。そういうときのために、その場でできる小さな手順を置いておきます。全部やる必要はありません。1つでいい。
比べて落ちた夜は、負けた夜じゃない。まだ諦めていない自分を、確認できた夜です。
それでも心が重い日は、うまくいかなくて泣きたい夜のための処方箋も、無理のない範囲でどうぞ。
あの深夜2時から、麻衣さんはひとつだけ習慣を変えました。他の人のアカウントを開く前に、必ず自分のいちばん最初の投稿を見返す、というルールです。
そこには、緊張で目が泳いでいる、半年前の自分がいました。声も細くて、コードも一度つっかえている。それでも一生懸命に歌っている。「この子、下手だけど、本気だな」。他人にするように、麻衣さんは過去の自分にそう思いました。そして今の自分の動画と比べて、初めて気づきました。ちゃんと、前に進んでいたことに。
数字を追うのをやめたわけではありません。フォロワーは今も、他の誰かよりずっと少ない。でも、麻衣さんは月に一度だけ数字を振り返り、あとの日は「今日は歌えたか」だけを見るようにしました。3ヶ月後、フォロワーは420人から680人に増えていました。劇的ではありません。でも彼女は言います。「数字より、また歌うのが楽しくなったことのほうが、うれしい」。
ここまで読んでくれたあなたは、きっと本気で音楽と向き合っている人です。だからこそ苦しい。その気持ちを、どうか一人だけで抱え込まないでください。
比べて落ち込む夜が続くと、「自分のやり方が間違っているのかも」と、方向まで見失いそうになります。そんなとき、隣で一緒に数字を眺めて「大丈夫、ここは伸びてるよ」と言ってくれる人がいるだけで、ずいぶん景色は変わります。伴走者を持つという選択については、音楽活動に伴走者は必要?でも書きました。
あなたのペースで、あなたの音楽を。焦らなくて大丈夫です。
STAR ROUTE MUSIC AGENCY
スタールートは、数字の裏で戦っているあなたの気持ちごと受け止める音楽事務所です。SNSの伸ばし方に迷ったら一緒に設計し直し、「もう一人では見られない」ときはSNS運用代行という選択肢もあります。全国どこからでもオンライン。相談は何度でも無料で、無理な勧誘もありません。まずは今の苦しさを、そのまま話しに来てください。