「自分を信じよう」なんて言葉、いちばん信じられないときに、いちばん響かないですよね。自分の声が嫌いで、才能なんてないと思っていて、それでも音楽が好きで。その矛盾を抱えたまま、今日もスマホを握っているあなたへ。信じられないなら、信じなくていい。その先の話を、少しだけさせてください。
まず、これを伝えたいんです。自分を信じられないのは、あなたが弱いからでも、覚悟が足りないからでもありません。むしろ、自分の音楽を真剣に見つめているから、粗も、足りなさも、全部見えてしまう。適当にやっている人は、そもそも自分を疑いません。疑えるのは、真剣な証拠です。
それに、自信満々のアーティストなんて、本当はほとんどいません。何万人のファンがいる人でも、新曲を出す前は「これ、誰にも刺さらなかったらどうしよう」と震えています。自信のなさは、才能の問題ではなく、表現する人がみんな抱えている、共通の持ち物なんです。むしろ、自分に一切の疑いを持たない人のほうが、伸びしろに気づけず、途中で止まってしまうことさえあります。疑えることは、まだ成長できる余白がある、ということでもあるんです。
一人の人の話をします。美桜さん(仮名・22歳)は、自分の歌声が、ずっと嫌いでした。録音した自分の声を聞くたびに、「なんでこんな声なんだろう」と落ち込む。だから、歌ってもすぐに消して、投稿には一度も踏み切れずにいました。
ある夜、いつものように弾き語りを録音して、消そうとした指が、止まったそうです。理由はうまく言えないけれど、その日の一本だけは、消せなかった。数日、下書きフォルダに眠らせて、それから、震える指で投稿ボタンを押しました。
「怖くて、投稿してから3時間、スマホを見られませんでした。どうせ何も反応ないって、自分に言い聞かせてた」
翌朝、恐る恐る開くと、コメントが2件ついていました。「声、好きです」「この歌詞、泣きました」。たった2件。でも美桜さんは、その2件を、何度も何度も読み返したそうです。自分がいちばん嫌いだった声を、「好き」と言ってくれる人が、この世界に確かにいた。
多くの人が、順番を勘違いしています。「自信を持ってから、行動する」——これが自然に思えますが、実は逆です。行動して、小さな結果が出て、後から自信がついてくる。自信は、始める条件ではなく、続けた結果として、あとから生まれるものなんです。
だから、「自分を信じられるようになったら投稿しよう」と待っていると、永遠に始まりません。その日は、待っていても来ないからです。信じられないまま、震える指で、それでも一歩出す。美桜さんがそうしたように。順番は、行動が先、自信が後です。
救いなのは、今はその「一歩」が、昔よりずっと小さくて済むことです。スマホ1台で録音して、30秒のショート動画を一本上げるだけ。tuki.さんやimaseさんのように、宅録の弾き語りや小さな投稿からじわじわ広がっていく人も、めずらしくなくなりました。大きな覚悟をひとかたまりで用意しなくていい。豆粒みたいな一歩を、信じられないまま、置くだけでいいんです。
才能がないと落ち込んでいるなら、「自分には才能がない」と落ち込むあなたへも読んでみてください。才能の正体について、もう少し掘り下げています。
とはいえ、「行動しろ」と言われても、心が動かない日はあります。そういう日のために、自分を信じられなくても実行できる、極小の一手をいくつか置いておきます。全部やる必要はありません。今日できそうな一つだけで十分です。
自分の声が嫌いという悩みは、とても多いものです。それが個性に変わっていく話は、自分の声が嫌いな人へ|個性への変え方で具体的に触れています。
自分を信じられないとき、頭の中には「どうせダメだ」という声が響いています。この声に、感情で言い返しても勝てません。かわりに効くのが、「事実」を集めることです。感情には、事実で対抗する。これが地味に効きます。
やり方はシンプルです。うれしかった反応を、一箇所に保存しておくんです。スマホのメモでも、スクリーンショットのフォルダでもいい。こんなものを貯めていきます。
| 集める「証拠」 | 信じられない日に効く理由 |
|---|---|
| もらった優しいコメント | 「誰にも響かない」という思い込みを崩す |
| 初めて投稿できた日の記録 | 「怖くても動けた自分」を思い出せる |
| 少しでも伸びた投稿の数字 | 「できたこと」を客観的に確認できる |
| 半年前の自分の作品 | 成長した距離が、目に見える |
特に最後が効きます。半年前の自分の歌や曲を聞くと、たいてい「あ、今のほうがマシだ」と思えます。信じられない日は、未来ではなく過去を見る。前に進んだ距離は、あなたが思うより、ちゃんとあります。
美桜さんも、これを実践しました。あの2件のコメントのスクリーンショットを、スマホのお気に入りフォルダに保存して、投稿が怖くなるたびに、それを開いたそうです。「どうせ誰も聞いてない」という頭の中の声に、「いや、この人は聞いてくれた」という事実で、静かに言い返す。感情の嵐に、事実の錨をおろす。これは、自信のない人ほど効く方法です。証拠は、遠くではなく、あなたの過去の中に、もう残っています。
美桜さんは、あの2件のコメントの日から、少しずつ投稿を続けました。それでも、自分の声が好きになったわけではありません。半年経っても、録音を聞くと、やっぱり気になるところはある。でも、変わったことが一つありました。
「声を好きになれなくても、続けられるって分かったんです。好きになってから、じゃなくてよかった。それを待ってたら、一生始められなかったから」
フォロワーは、この時点で約900人。数字だけ見れば、まだ小さい。でも美桜さんの中では、大きな変化が起きていました。「自分を信じる」を、「自分を信じられなくても、続ける」に、置き換えられたんです。これは、ずっと強い。信じる気持ちは揺れますが、続ける行為は、揺れても取り戻せるからです。
頑張っても評価されないと感じる日については、頑張っても評価されないと感じるときの考え方も、そっと支えになるかもしれません。
「自分を信じる」って、才能を信じることだと、つい思ってしまいます。でも、才能は自分では見えません。見えないものを信じるのは、そりゃ、難しい。だから、信じる対象を変えましょう。
才能ではなく、「続けている事実」を信じる。これなら、目に見えます。今日も音楽に触れた。今週も投稿した。先月より、少しマシになった。この積み重ねは、疑いようのない事実です。才能があるかは分からなくても、続けている自分がいることは、確かめられる。信じるなら、そっちを信じてください。
もう諦めようかと思う夜が来たら、「もう音楽を諦めようかな」と思った夜に読む話も開いてみてください。同じ夜を越えた誰かの言葉が、待っています。
最後に、いちばん伝えたいことを。自分で自分を信じるのは、本当に難しいことです。でも、誰か一人が、あなたを信じてくれると、その難しさは、ぐっと下がります。「あなたの音楽、いいと思う」と言ってくれる人が一人いるだけで、自分では持てなかった自信を、借りることができるんです。
美桜さんにとっては、最初のあの2件のコメントが、その「一人」でした。あなたにとっての一人は、まだ現れていないかもしれない。でも、探せばいます。同じ夢の仲間かもしれないし、あなたの音楽をビジネスとして一緒に育てる立場の人かもしれない。孤独が続いているなら、音楽仲間がいなくて孤独なときも読んでみてください。
自分を信じられない日は、これからも来ます。それでいい。信じられない日を、一人で越えなくていい。信じてくれる誰かの声を、少しだけ借りながら、また明日、音楽に触れればいいんです。
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