やる気が、どこかへ行ってしまった。投稿するのが義務みたいになって、音楽が楽しくない。もしそうなら、少しだけ立ち止まって、思い出してほしい日があります。あなたが初めて、誰かに拍手をもらったあの日のことを。この記事は、枯れかけたモチベーションに、そっと水をやるための時間です。
美咲さん(仮名・25歳)は、2年ほどSNSで弾き語りを続けてきました。始めた頃は、毎日ギターを触るのが楽しくて仕方なかった。でも最近は、朝起きて真っ先にすることが、「昨日の投稿、伸びたかな」の確認になっていました。
数字が悪いと、一日中それを引きずる。投稿は、いつのまにか「やらなきゃいけない作業」に変わっていました。ある朝、ギターケースを開けようとして、美咲さんはふと手が止まりました。
「あれ。わたし、音楽、好きだったよな……。いつから、こんなに苦しくなったんだろう」
やる気が湧かない自分を、美咲さんは責めていました。でも、やる気が出ないのは、怠けているからではありません。多くの場合、それは「なぜ始めたか」を見失っているサインです。
「モチベーションを上げる方法」を探している人は多いですが、やる気は、蛇口をひねって出すようなものではありません。無理に自分を奮い立たせようとすると、たいてい長続きしません。気合いで盛り上げたテンションは、翌朝には冷めています。そして冷めた自分を見て、また「自分はだめだ」と落ち込む。この上げ下げの繰り返しが、いちばん心を消耗させます。
本当に持続するモチベーションは、外から足すものではなく、自分の中にすでにあるものを思い出すことから生まれます。あなたが音楽を始めたときには、間違いなく理由がありました。その火は消えたわけではなく、数字や忙しさの下に、埋もれているだけです。
やる気が根こそぎ枯れてしまったと感じるときは、音楽のスランプの抜け方も、無理のないときにのぞいてみてください。
ここで、少し目を閉じて思い出してほしいのです。あなたが、初めて誰かに音楽を「よかった」と言われた日のことを。
それは、学園祭のステージだったかもしれません。友達の前で歌った、たった一度の弾き語りだったかもしれません。初めての路上ライブで、立ち止まってくれた見知らぬ人の、小さな拍手だったかもしれません。あるいは、初めての投稿についた「泣きました」の一言だったかもしれません。
そのとき、あなたの胸はどうでしたか。手は震えていましたか。「もっと聴いてほしい」と思いましたか。数字ではなく、その温度こそが、あなたが本当に求めていたものです。フォロワー1万人が欲しかったのではなく、目の前の誰かの心に触れたかった。その原点を、思い出してみてください。
面白いのは、あの日の拍手を思い出すと、多くの人の顔がゆるむことです。数字の話をしているときの、あの張り詰めた表情が消えて、少しだけ子どものような目に戻る。それこそが、あなたが音楽に対して持っていた、いちばん素直な気持ちの証拠です。その気持ちは、まだ枯れていません。ただ、しばらく水をやり忘れていただけです。
あの拍手は、フォロワーが100人でも1人でも、同じ重さで、あなたの心に届いていたはずです。
SNSを続けていると、いつのまにか目的がすり替わっていきます。最初は「聴いてほしい」だったのに、だんだん「数字を伸ばしたい」になり、最後は「数字が落ちるのが怖い」になる。この変化に、多くの人が気づかないまま消耗していきます。
| 始めた頃の気持ち | いつのまにか変わった気持ち |
|---|---|
| 誰かに聴いてほしい | 数字を伸ばさなきゃ |
| 作るのが楽しい | 投稿しないと不安 |
| 1つの「いいね」がうれしい | 前より少ないと落ち込む |
| 自分の歌が好き | 他人と比べて自信をなくす |
右側に来てしまっていても、あなたが悪いわけではありません。SNSは、そうなるように作られている場所です。他人と比べて苦しくなる仕組みについては、誰かと比べて苦しいループから抜け出す方法でも触れました。大事なのは、左側の気持ちに、時々戻ってあげることです。
原点を思い出すために、紙とペンを用意して、次の問いに答えてみてください。頭で考えるだけでなく、手で書くと、埋もれていた気持ちが浮かんできます。
書き終えたら、それをスマホのメモか、目に入る場所に残しておいてください。数字に押しつぶされそうになった日、それが「戻る場所」になります。この作業は、目標を立て直すときにも役立ちます。音楽活動の目標の立て方もあわせてどうぞ。
原点を思い出したうえで、もう一つ大事なことがあります。それは、やる気がある日だけ動く、をやめることです。やる気は波があります。波に頼っていると、活動も波打って、いずれ止まります。
だから、やる気がなくてもできる小さな仕組みを作っておきます。たとえば「毎週日曜の朝10分だけギターを触る」「うまく撮れなくても、月に2本は出す」。ハードルを下げるほど、続きます。「調子がいいときにまとめてやろう」と思うと、その日は永遠に来ません。逆に、10分だけと決めておくと、触っているうちに30分に伸びる日も出てきます。続ける仕組みの作り方は、SNSが続かないアーティストへ|意志に頼らない投稿の仕組みで具体的に紹介しています。
あの朝、美咲さんは投稿をお休みして、代わりに、初めての路上ライブの動画を探しました。2年前、駅前で歌った、たった一本の記録です。
画面の中の自分は、声も震えていて、お世辞にも上手とは言えませんでした。でも、一曲歌い終えたとき、通りすがりの女性が二人、立ち止まって拍手をしてくれていました。そのうちの一人が「がんばってね」と声をかけてくれた瞬間の、自分の泣きそうな笑顔。美咲さんは、その顔を見て、涙が出ました。「そうだ。わたし、この瞬間が好きで、始めたんだ」。
次の日から、美咲さんは数字を見る回数を、一日一回に決めました。そして投稿の前に、必ずあの動画を見返すことにしました。すると、少しずつ、投稿が「作業」から「あの拍手を、もう一度もらいにいくこと」に変わっていきました。3ヶ月後、フォロワーは劇的には増えていません。でも彼女は言います。
「数字は前とそんなに変わってない。でも、音楽がまた楽しくなった。それがいちばん、取り戻したかったものでした」
初めて拍手をもらった日の温度は、消えてなくなったわけではありません。今も、あなたの中に残っています。数字に疲れたときは、上を向くのではなく、少しだけ後ろを振り返って、あの日を思い出してあげてください。上を向いて他人の高さばかり見ていると、足がすくみます。でも後ろを振り返れば、そこには、確かに前へ進んできた自分がいます。
そしてもう一つ。今日のあなたの一投稿が、いつか誰かにとっての「初めて拍手を送った日」になるかもしれません。あなたが誰かからもらった温度を、今度は別の誰かに手渡していく。その連鎖の中に、続ける意味は静かにあります。
そして、もし一人で原点に戻るのが難しいなら、その気持ちを誰かに話してみるのも一つの方法です。「なぜ始めたか」を言葉にする手伝いや、また楽しく続けられる設計を、一緒に考える相手を持つこと。伴走者の価値については音楽活動に伴走者は必要?でも書きました。
あなたの音楽を待っている人は、必ずいます。焦らなくて大丈夫。今日は、あの拍手を思い出すだけで、十分です。
STAR ROUTE MUSIC AGENCY
スタールートは、数字に疲れてしまったあなたの原点に、そっと寄り添う音楽事務所です。また楽しく続けられる発信の設計や、一人では抱えきれないときのSNS運用代行まで、全国どこからでもオンラインで伴走します。相談は何度でも無料。「最近、音楽が楽しくない」——その気持ちごと、まず話しに来てください。